1950年代の流産防止薬が、化学物質の影響を明らかにした!
すでに60年前になりますが、アメリカで爆発的に流行した流産防止薬(DES)と、その20年後に次々と起こった子どもたちの病気や異常との関連が明らかになり、使用禁止となりました。
DESというこの薬は、わたしたちに一体何を教えてくれたのでしょうか?
DESってどんな薬?
DESとは、1950年代にアメリカで使われていた流産防止薬で「ジエチルスチルベストロール」というのが正式名称です。
これは化学合成によってつくられた女性ホルモンのひとつで、エストロゲンに似た作用を持っています。
流産の防止には確かに高い効果がありましたが、20年後の1970年代になると、DESを服用した女性から生まれた子どもたちに、若い年齢でのガンの発症が多発したのです。
DESの影響とは?
DESを飲んでいた母親から生まれた女の子は、若くして膣がん、男の子は精巣がんや前立腺がんを発症する例が多くありました。
がんの発症する箇所が生殖器であること、この部位のがんは若い世代にはほとんど見られないことから、調査が行われ、がんだけでなく、女の子の先天的ホルモンバランス異常、男の子の精子数の低下、停留精巣、尿管萎縮といった障がいが出やすいこともわかってきました。
これらがDESの影響だとして、使用禁止となりましたが、20年間使用されてきた薬の影響は、今でも続いているといえるでしょう。
なぜ生殖器に影響が出たのか?
DESでなぜ生殖器のがんが多発したのかは、現在でも結論の出ないところですが、考えられるのは「合成ホルモン剤」だったということです。
合成ホルモンが胎児にまで影響し、性機能や生殖器をつくる過程で作用してしまったのではないかと考えられています。
この合成化学物質は、人工的に合成したもので、その昔はプラスチックの原料からもエストロゲンを合成しようとしたほど、化学構造のよく似た物質なのです。
つまり、身近にエストロゲンと似た作用を起こす物質があるということです。もちろん、流産を抑える効果はありましたが、その代償も大きなものだったと言わざるを得ません。
DES問題と同じ頃「沈黙の春」という、環境問題に警鐘を鳴らす本が発売され、世界的に話題になりました。
人間だけでなく、自然界の生態系までをも侵す化学物質。便利と引き替えに、たくさんの宿題を残してしまったのですね。
参考文献:経皮毒からの警告
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